住宅ローンを借りる場合、完済時年齢や健康状態、年収や勤続年数といったさまざまな観点で審査を受けることになります。具体的にどんな流れで審査が進み、どういう点を見られて、どうすれば審査に通りやすくなるのか、気にしている人は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ファイナンシャルプランナーとして活躍する岩永真理さんに、住宅ローンの審査のポイントについて伺いました。
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1.事前審査と本審査の違いは?住宅ローンの審査の流れ

ーーまずは、住宅ローンの審査の流れについて教えてください。
岩永:住宅ローンを借りられるかどうかは、事前審査(仮審査)と本審査の2回の審査を経て決まります。
1-1.事前審査(仮審査)
ーー事前審査があるんですね。簡易的な審査なのでしょうか。
岩永:はい。本審査の申し込みをする前に行われる簡易的な審査のことで、借入金額・返済期間の目安について調査を行います。借入者にとっては、本審査に通るかどうかの判断材料になり、もし難しそうなら対策を考えることもできます。
金融機関にとっても、効率よく住宅ローン契約を進められるメリットがあります。本審査までいくと調査や審査に多くのリソースを使うので、事前審査で審査対象を絞り込むわけです。
1-2.本審査
ーーとなると、本審査ではかなり多くの項目を見られることになりそうですね。
岩永:そうですね。本審査では、借りる本人の信用情報や所得、購入する住宅の価値などについて再度審査を行います。提出する書類も事前審査より多く、審査にも時間がかかります。
事前審査の申し込みから本審査の完了まで、一般的に長くて1か月半程度かかると思っておいたほうがよいでしょうね。そして事前審査に通っても、情報が不正確だと本審査で落ちる可能性もあります。
2.住宅ローンの審査では、何をチェックされるの?

ーーでは、実際に住宅ローンの審査では、どんな項目を見られるのでしょうか?
岩永:国土交通省住宅局の令和6年度調査によると、9割以上の金融機関が借入時年齢と完済時年齢、健康状態、年収、勤続年数、返済負担率、担保評価を審査項目にしていると回答しています。その他に、雇用形態や借入状況・信用情報も確認されます。一つずつ説明しますね。
2-1.借入時年齢
借入時年齢は、一般的に20歳以上65歳未満という条件が多いです。ただし、社会人経験が浅い20歳や退職による収入減少が見込まれる65歳に近い年齢の場合は、審査で慎重に判断されるケースがあります。
また、フラット35は満70歳までが借入時年齢となります。親子リレーローンを利用する場合は、70歳以上でも借入が可能です。
2-2.完済時年齢
完済時の年齢は金融機関ごとに決まっていて、多くの金融機関の上限は80歳未満です。その場合、たとえば50歳の人が35年ローンを組むことはできません。
また、80歳未満が上限だからといって、ギリギリまで返済するつもりで住宅ローンを組むことはおすすめしません。実際には、リタイア後の年金収入や貯蓄を考慮して計画しましょう。
2-3.健康状態
多くの金融機関では、団体信用生命保険(団信)への加入が住宅ローン契約の必須条件です。病気や健康状態によっては団信に入れないこともあり、そうなると住宅ローンの審査に通らない可能性があります。
具体的には、過去3年以内の入院・手術歴や2週間以上の治療歴がチェックされます。心臓病、脳卒中、糖尿病、精神疾患、がんなどが主な対象の病気です。健康上の問題があり、団信に入れない場合は、フラット35の利用を検討しましょう。
2-4.年収
金融機関によって基準は異なりますが、一般的には最低年収200~400万円程度、多くは300万円程度が目安となります。フラット35は年収制限はありませんが、極端に低い年収では審査に通らない可能性があります。
2-5.勤続年数・雇用形態
勤続年数は、1年以上が最低ラインとする金融機関が多いです。派遣社員や契約社員の場合は、金融機関によって対応が異なります。借入れ可能な金融機関もあれば、対象外となっているところもあります。
転職回数については、キャリアアップ転職や大企業への転職など、ポジティブな転職であればプラスに働くことが多く、その場合は転職して1年未満でも問題にならない可能性があります。
また、自営業は収入の見通しが立ちにくいことから、審査で不利だと考えられることもありますが、業歴や安定した収入実績などがあれば、問題になることは少ないでしょう。
2-6.返済負担率
返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合のことです。金融機関や個人の条件によって変わりますが、一般的には25~40%以内に設定することが多く、この割合が高過ぎると審査に通りにくくなることがあります。
いずれにしても、借り過ぎるのは返済できなくなるリスクがあるので、25%程度に抑えることをおすすめします。
2-7.借入状況・信用情報
自動車や教育ローンなど、住宅ローン以外に借入がある場合は、それらの返済額も審査対象です。また、携帯電話の分割払いや奨学金なども借入に含まれます。さらに、クレジットカードや各種ローンの返済の遅延、債務整理などの記録があると、審査に不利に働くことがあります。
2-8.物件の担保価値
購入する物件の担保価値も、住宅ローン審査の判断基準となります。担保価値が高ければ、それだけ多く借入できます。ただし、中古物件は評価基準にばらつきがあり、金融機関によっても借入金額が変わる可能性があります。
3.住宅ローンを少しでも借りやすくするためのポイントは?

ーー説明していただいた審査項目を踏まえた上で、住宅ローンを借りやすくするために他にできることはありますか?
岩永:ありますよ。次の4つをぜひ検討してみてください。
3-1.借入希望金額を低くする
もっとも重要なのは、借入希望金額を低くすることです。住宅金融支援機構「2024年度フラット35利用者調査」では、およそ年収の6~7倍まで借りる人が多いようですが、これは完済するためのかなりギリギリの金額です。7倍以上借りるのは避ける方が無難でしょう。
どうしても物件価格を下げられない場合は、頭金を多く用意する、親から援助を受ける、なども検討するとよいでしょう。また、同じような立地では、中古物件を視野に入れると物件価格を下げる一つの方法になります。
3-2.夫婦で住宅ローンを組む
夫婦それぞれが契約者となる「ペアローン」を組むことで、借入可能額を増やすこともできます。ペアローンが向いているのは、夫婦それぞれに一定の収入があり、住宅ローン控除をそれぞれ受けたい方、または女性が出産後も働き続けるという明確な意思がある場合や夫婦ともに生涯安定した収入が見込める場合などです。
子どもの教育上、無理してでも特定のエリアに住みたいなど、事情がある場合はペアローンを検討してもよいでしょう。あるいは、夫婦に年齢差があり、それぞれの条件に合わせた借入期間や金利タイプを選びたい場合にも適しています。
一方でペアローンに向かないのは、出産後の就労を予定していない場合や収入が不安定な場合、離婚の可能性がある場合などです。
3-3.収入合算(連帯保証型)を利用する
配偶者や親の収入を合算して、審査を受けるケースです。ペアローンとは異なり、1本のローン契約で済みます。ただし、主債務者が返済できなくなった場合、連帯保証人に返済義務があります。また、住宅ローン控除も主債務者の収入分しか受けられません。
3-4.借入期間を調整する
返済期間を長めに設定すると、毎月の返済額が減って返済負担率も下がるため、審査に通りやすくなる可能性があります。ただし、支払利息の総額は増加する点には注意が必要です。
4.住宅ローンに通らなかった場合の対策は?

ーーあまり考えたくないものですが、住宅ローンが通らなかった場合は、どうしたらいいのでしょうか?
岩永:対策はあるので、まずは次の2つを検討してみてください。
4-1.他の金融機関を検討する
審査に通らなかったら、他の金融機関を検討するのも一つの方法です。ただし、仮に別の金融機関で審査に通っても、金利が高くなったり、住宅ローン控除の条件を満たさないローンになったりと、条件が悪くなる可能性もあるので注意しましょう。同じ条件のまま別の金融機関で審査に通ることは、一般的には難しいと言えます。
4-2.条件を整えてから再度申し込む
頭金を増やしたり、他のローンを完済したりと審査に通りやすくなる条件を整えてから再度申請するのは効果的な方法です。審査に通るためだけでなく、利息負担を減らす意味でも良い対策です。
ただ、「なぜ審査に落ちたのか」を金融機関に質問しても、回答してくれるかどうかはわかりません。また、ローンの滞納など信用情報に問題がある場合は、契約期間内または契約期間後5年間は記録が残るため、その期間内は何度申請しても状況は変わらない可能性があります。
5.あらかじめ審査項目と基準をチェックして対策しよう

住宅ローンの審査では、さまざまな項目で審査されることになります。住宅ローンを借りやすくするためには、一つひとつの項目で自身が条件を満たしていそうか冷静に見ていきながら、状況に合わせて借入希望額を少なくしたり、頭金を増額したり、夫婦でペアローンを組んだりなどのあらゆる方法を検討しましょう。