マンションの大規模修繕とは?工事内容やスパン、購入時に考えたい注意点

マンションの大規模修繕

大規模修繕は、マンションの寿命や資産価値を左右する大切なプロセスです。「これからマンションを買いたい」「分譲マンションに住み始めた」という方は、大規模修繕に関して正しく理解しておく必要があります。

この記事で、大規模修繕の具体的な工事内容やスパン・費用の目安、修繕積立金の考え方などをまとめて確認しておきましょう。

1.大規模修繕とは

マンションの大規模修繕

マンションなどの集合住宅では、およそ10数年に一度のタイミングで大規模修繕が行われます。ここではまず、大規模修繕の基本的な定義と工事の内容、目的について見ていきましょう。

1-1.建築基準法における定義

建築基準法では、大規模修繕について以下のように定義されています。

第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる
十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう

また、主要構造部についても、同じく建築基準法で以下のように定義されています。

五 主要構造部 壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。

※引用:e-Gov『建築基準法』

このように、法律上は壁や柱、床、はり、屋根、階段の一種類以上について、半分以上の大がかりな修繕を行うことを大規模の修繕と呼びます。建物を支える重要な部分の修繕となるため、マンション全体に大きな影響が及びます。

1-2.建物の劣化部分や故障箇所を修繕する工事

法律上の定義は1-1の通りですが、一般的に「マンションの大規模修繕」と言われる時には、より幅広い意味で用いられることもあります。例えば、築年数が浅い建物では、塗装や防水、鉄部の工事といった作業が中心になり、主要構造部の大半を修繕するような工事になることは少ないです。

マンションにおける大規模修繕工事の基本的な目的は、経年劣化した部分や故障した部分を補修し、機能を回復させることにあります。通常の修繕のように臨時で「故障したから実施する」というものではなく、あらかじめ計画を立てて、年単位の期間で実施されるのが特徴です。

大規模修繕工事には多額の費用がかかるため、建物が完成した時点で、おおまかな費用や実施のタイミングを見積もっておかなければなりません。その計画は、「長期修繕計画」と呼ばれ、主に管理組合の主導で立てられます。

1-3.大規模修繕工事の内容

マンションの大規模修繕工事では、基本的に共用部分が対象となるのが特徴です。主な工事内容としては、外壁の修繕や塗装、シーリングの補修、屋上の補修・防水、鉄部の塗装、階段・バルコニーの補修などが挙げられます。

また、工事に合わせて、宅配ボックスなどの共用設備を新たに導入することもあります。

1-4.マンションの大規模修繕が必要な理由

建物は経年劣化していくため、安全性や快適性、耐久性を維持するためにも、定期的なメンテナンスが欠かせません。特にマンションのような鉄筋コンクリート造の建物では、構造部を守るために、コンクリート内部の劣化を防ぐことが重要です。

内部を守るためには、外壁のひび割れなどを早めに発見して直しておかなければなりません。そして、コンクリートを補修するには、建物全体に及ぶ大がかりな足場が必要となります。

足場を組むには大きなコストがかかるため、足場を必要とするその他の工事も同時に済ませる方が経済的です。そのため、結果としてさまざまな工事内容が組み合わさり、大規模になるケースも多いと言えるでしょう。

また、大規模修繕工事には、適切なメンテナンスによって不動産としての資産価値を維持する目的もあります。中古マンションの売買市場では、長期修繕計画の内容や修繕工事の実施履歴なども重要な情報とされ、資産価値を左右する要素の一つになります。

2.大規模修繕のスパン

マンションの大規模修繕

大規模修繕工事は、どの程度の頻度で行われているのでしょうか。ここでは、データをもとにそのスパンについて解説します。

2-1.周期の平均は15.2年に1回

国土交通省の令和3年度の調査によれば、マンションの大規模修繕の平均的な周期は15.2年となっています。また、回数ごとの平均周期については、1回目が15.6年、2回目が14.0年、3回目が12.9年となっており、回を重ねるごとに周期が短くなっていることが分かります。

築年数でいえば、1回目は築15年以下、2回目は築26~30年、3回目は築41年以上で実施されている割合がもっとも高く、全体的に見れば10~15年に一度は行うものであると考えられるでしょう。

※出典:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」

2-2.準備には1、2年ほどかかるのが一般的

一般的に、大規模修繕工事の計画から着手までには、1、2年程度かかります。準備の内容は、設計会社にコンサルティングを依頼する「設計監理方式」と、管理会社や施工会社に設計から施工を頼む「責任施工方式」で大きく異なります。

その間、管理組合は依頼先の選定や見積もりのチェック、施工会社の決議、工事請負契約の締結、住民への説明会といったさまざまな手続きを行わなければなりません。各種の決定事項は、管理組合内でしっかりと合意形成を図る必要があり、話し合いが難航すればさらに時間がかかることもあります。

そのため、大規模修繕の周期を踏まえて、できるだけ早めに話し合いをスタートしておくことが大切です。

3.大規模修繕の流れと工事期間の目安

マンションの大規模修繕

ここからは、大規模修繕の具体的な流れと、工事期間の目安について見ていきましょう。

3-1.一般的な流れ

大規模修繕の内容は、実施される回数によっても異なります。例えば、1回目の大規模修繕工事では、以下のような手順で進められるのが一般的です。

▼仮設工事
▼下地補修工事
▼タイル補修工事
▼シーリング工事
▼塗装工事(外部、鉄部)
▼防水工事
▼付随工事

「仮設工事」とは、足場や必要な設備の設置作業のことです。仮設は工事が完了したら撤去されますが、安全に工事を進めるうえで欠かせない構造物です。

仮設工事が済んだら、壁などのコンクリート部分に生じたひび割れを補修する「下地補修工事」が行われます。その後、外壁などの「タイル補修工事」、サッシ回りや外壁のつなぎ目の「シーリング工事」を行い、外装部分の補修を進めます。

続いて、外壁部分や鉄部(外部階段や手すりなど)の「塗装工事」を行い、屋上やバルコニー、廊下、階段の「防水工事」を行って作業は完了です。なお、大規模修繕工事では専有部は対象となりませんが、各住戸のバルコニーは共用部であるため、工事の範囲に含まれます。

また、大規模修繕計画によっては、このタイミングでエントランスの改修や新たな設備の導入といった「付随工事」を行うことも。1回目の工事では、まだそれほど建物の劣化が進んでいないこともあり、以降の工事と比べると内容がシンプルになる傾向にあります。

2回目以降はより踏み込んだ内容の工事が必要となり、3回目では給排水や玄関ドア、電気設備なども対象となることが多くあります。

3-2.工事期間は3~5カ月が目安

大規模修繕工事に必要な期間は、内容や建物の規模によっても異なりますが、3~5カ月程度が目安とされています。ただし、100戸以上の大規模なマンションでは、さらに長い期間かかるケースもあります。

その間、管理組合は定期的に施工会社や工事監理会社から報告を受けるため、月に1度ほどは定例会議を開催するのが一般的です。

4.大規模修繕工事の費用

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大規模修繕工事には大きなコストがかかるため、長期的なスパンで計画的に準備を進める必要があります。ここでは、工事にかかる費用の目安について見ていきましょう。

4-1.1戸当たり100~125万円のケースが多い

国土交通省の調査では、大規模修繕工事の回数ごとに区分された工事金額のデータが示されています。それによれば、1回目の工事は「4,000~6,000万円」の回答割合がもっとも高く、2回目は「6,000~8,000万円」、3回目以上は「6,000~8,000万円」「10,000~15,000万円」の割合がそれぞれもっとも高い結果となっています。

また、一戸当たり工事金額でもっとも高い回答割合を占めるのは、「100~125万円/戸」です。ただし、これらのデータには、いずれも「共通仮設費(仮設工事の費用)」は含まれていません。

なお、大規模修繕工事の仮設工事費用は、総工事費の22.8%と示されています。そのため、上記のデータはあくまで全体の70%程度であると考えておく必要があります。

※出典:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」

4-2.工事費の捻出方法

大規模修繕の費用は、主に「修繕積立金」と「補助金・助成金」の2通りの方法でまかなわれます。

4-2-1.修繕積立金

マンションの大規模修繕費用の多くは、区分所有者が毎月支払う修繕積立金によってまかなわれています。修繕積立金とは、管理費とは別立てで集められるお金で、主に大規模修繕のために使われる資金です。

その他、国土交通省がまとめている「マンション標準管理規約」によれば、以下のような用途にも使われています。

  • 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕(大規模修繕)
  • 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
  • 敷地及び共用部分等の変更
  • 建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査
  • その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理

※出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」

修繕積立金の金額はマンションごとに異なり、同じ建物でも、各住戸の専有面積に応じて変わります。基本的には、専有面積が広い住戸の方が負担は大きくなるのが特徴です。

国土交通省の調査によれば、修繕積立金の平均額は「月/1戸当たり 13,378 円」となっています。ただし、36.6%のマンションが大規模修繕計画に対する修繕積立金不足を抱えているとされています。

また、築年数の浅いマンションを中心に、「段階増額積立方式」が採用されるケースも多く、途中で値上げとなる場合も少なくありません。

※出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」

4-2-2.補助金・助成金

マンションの大規模修繕には、一定の要件を満たすことで、補助金や助成金を活用できる場合があります。国の制度としては、「マンションストック長寿命化等モデル事業」が、マンションの寿命を延ばすための補助支援策として整えられています。

また、大規模修繕によって固定資産税が減税される「マンション長寿命化促進税制」など、税制における優遇措置も用意されているので押さえておきましょう。その他にも、自治体によって独自の制度が運営されている場合があるため、事前にチェックしておくことが大切です。

※参考:国土交通省「マンション総合対策モデル事業」
※参考:国土交通省「マンション長寿命化促進税制」

5.タワーマンションの大規模修繕

マンションの大規模修繕

タワーマンションは建物の高さや規模の大きさにより、大規模修繕の難易度が高くなってしまうケースがあります。ここでは、タワーマンションにおける大規模修繕の実情について解説します。

5-1.タワーマンションの大規模修繕が難しいとされる理由

タワーマンションの大規模修繕が難しくなりやすい理由の一つは、工期が長引きやすい点にあります。タワーマンションは高層の建物になるため、通常のマンションと同じように足場を組むのは現実的ではありません。

足場にはさまざまな方法があり、例えば「中層階までを鋼製足場で対応し、高層階はゴンドラで作業する」といったパターンや、「一棟をゴンドラメインで工事する」といったパターンがあります。ゴンドラを使う場合は、風の影響を受けやすいため、天候によって工期が長引いてしまうのが難点です。

また、総戸数が多いため、区分所有者同士の合意形成が難しいのも理由の一つです。高層階と低層階では経年による影響の度合いが異なり、求める工事内容が一致しにくい点も問題になりやすいといえます。

そのうえで、特に大きな課題となるのが、工事コストの大きさです。タワーマンションでは特殊な足場が必要なほか、共用部分の設備水準も高いため、修繕費用は高くなる傾向にあります。

5-2.タワーマンションの大規模修繕を進めるためのポイント

基本的には、通常のマンションと同じように長期修繕計画に基づいて工事を進めていくこととなります。しかし、タワーマンションでは工事の規模が大きく、合意形成にも時間がかかることから、2~3年前には準備に着手する必要があります。

また、居住者の代表で修繕委員会を構成し、工事内容や事業者の選定を進められるように体制を整えることも大切です。建築コンサルタントのサポートを受けつつ、居住者に建築や法律、財務に関する専門家がいれば、積極的に協力を求めるのもよいでしょう。

特に、修繕積立金の積立状況は定期的に把握し、不足が生じる場合は早い段階で値上げの検討を進めなければなりません。大規模修繕を行う数年前の段階で、建物や設備の点検を行い、おおまかな費用を見積もっておくとよいでしょう。

6.マンションに住むなら大規模修繕の内容とタイミングも知っておこう

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マンションでは10~15年に1度のタイミングで、大規模修繕工事が行われます。大規模修繕工事は、建物の寿命や資産価値を左右する重要な節目でもあるため、綿密な計画が求められます。

また、大きなコストがかかるため、分譲マンションの場合は、修繕積立金という形で区分所有者が毎月費用を積み立てておかなければなりません。大規模修繕工事の内容や費用は、すでにマンションに住んでいる人だけでなく、これからマンションを買う人にとっても重要な項目となるので、基本的な仕組みは理解しておきましょう。

マンションの住み替えなどについて気になり始めたら、ぜひ東方地所までお気軽にお問い合わせください。

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